「全部ひとりでやってきたけど、そろそろ限界かもしれない」
音楽活動をしている人から、いちばんよく聞く言葉です。曲を作って、練習して、ライブを組んで、告知して、物販を用意して、経理もやる。本来やりたかった「表現」の時間が、いちばん後回しになっている。
そこで「マネージャーがいたら」と考えます。ただ、その前に整理しておくべきことがあります。マネージャーを付けても解決しない問題が、けっこう多いからです。
この記事では、マネージャーが何をする人なのかを具体的に整理したうえで、付ける前に自分でやっておくべきことまで書きます。
マネージャーの仕事は、大きく4つ
「付き添い」と思われがちですが、実際の中身はこうです。
1. 段取りをつける
- スケジュールの管理と調整
- ライブ・イベント・メディア出演の手配
- レコーディングや撮影の立ち合い
- 移動と宿泊の手配
2. 外部と話す
- ライブハウス・イベンターとの交渉
- 企業やスポンサーとのやり取り
- 制作者(作曲・編曲・デザイン・映像)との調整
- 金額と条件を詰める
3. 守る
- 契約や報酬の確認
- トラブルが起きたときに前に出る
- 無理な依頼を断る
4. 判断に付き合う
- 受けるか断るかの相談相手になる
- 方向に迷ったときの第三者の視点
- 数字を一緒に見る
まとめると、「アーティストが創作に集中できる状態を作る」のがマネージャーの仕事です。
ある1日の例
帯同がある日は、実際こんな動きになります。
- 9:00 メール確認、当日のスケジュール整理
- 11:00 本人と合流、現場へ移動
- 13:00 収録の立ち合い
- 16:00 移動中に企業と電話
- 18:00 告知の進捗確認
- 21:00 翌日のスケジュールと宿泊手配
「裏方=楽」というイメージとは逆で、判断が絶えず求められる仕事です。だから、誰でもできるわけでも、安く済むわけでもありません。
アーティストとマネージャーの役割分担
うまく回っているチームは、線がはっきりしています。
- アーティスト:表現、発信、世界観。何を目指すかを決めるのも本人
- マネージャー:段取り、交渉、守り、判断への同席
ここを曖昧にすると、必ず揉めます。よくある崩れ方は2つです。
崩れ方1:アーティストが全部投げる
「方向性も決めてください」となると、それはもう本人の作品ではなくなります。マネージャーは決める人ではなく、決めるのを助ける人です。
崩れ方2:マネージャーが前に出すぎる
本人の意思より効率を優先すると、活動が続かなくなります。数字は伸びても、本人が納得していなければ意味がありません。
うまくいっているチームの共通点
- 目的が共有されている(例:1年後にワンマンを埋める)
- お互いの意見を言える関係がある
- 定期的に「今どう思っているか」を言葉にしている
3つ目が特に重要です。不満は溜まってから出すと爆発します。月1回でいいので、話す場を決めておくほうがうまくいきます。
マネージャーを付ける前に、自分でやること
ここが本題です。「限界だからマネージャーを」と考えたとき、実は整理すれば自分でできることがかなりあります。
そして整理しないまま人を入れると、混乱したまま人数だけ増えることになります。
1. やっていることを全部書き出す
1週間、自分がやった作業を全部メモしてください。曲作り、練習、告知、DM返信、経理、物販の在庫確認、機材の手入れ。
書き出すと、多くの人が「表現に使えている時間が2割以下」だと気づきます。
2. 3つに分ける
- 自分にしかできないこと:曲を作る、歌う、演奏する、世界観を決める
- 今は自分がやっているが、人に渡せること:告知の投稿、日程調整、在庫管理
- そもそもやらなくていいこと
3つ目が意外とあります。「なんとなく続けている作業」です。毎日のSNS投稿、義理で出ている対バン、使っていないアカウントの更新。
3. やめるものを決める
人を入れる前に、まず捨てられるものを捨ててください。これだけで時間が戻ってくることがあります。
4. 渡せる形にする
残った作業のうち、人に渡せるものを手順にします。「なんとなくやっている」ままでは、誰かに頼んでも同じ品質になりません。
ここまでやってはじめて、「何を頼みたいのか」が言葉になります。これが決まっていない状態でマネージャーを探しても、お互いに何をすればいいか分かりません。
マネージャーは「売れてから」ではない
よくある誤解が、「売れたらマネージャーが付く」というものです。
実際は逆のことが多い。売れる仕組みを一緒に作る段階から入るほうが、結果は出やすいです。ただしそれは、本人側に「何を任せたいか」が整理できている場合に限ります。
整理されていない状態で人を入れると、マネージャー側も何から手を付けるか分からず、結局「言われたことをやるだけの人」になります。
お金の話を先にする
マネージャーとの関係でいちばん揉めるのが、お金です。そして揉める原因のほとんどは、始めるときに決めていなかったことです。
最初に決めておくべきなのは、この4つです。
1. 報酬の形
大きく3つあります。
- 固定:毎月いくら。金額が読めるが、活動が伸びても相手の取り分は変わらない
- レベニューシェア:収入の何割か。出ないときは払わなくて済むが、伸びると負担が増える
- 固定+シェア:両方。立ち上がりを支えつつ、伸びたときに利害が揃う
どれが正解ということはありません。ただ「出世払いで」のような曖昧な形にすると、必ず後で食い違います。
2. 何を対象にするか
レベニューシェアにする場合、どの収入が対象なのかを明記します。
- ライブのギャラ
- 物販の売上
- 配信・サブスクの収益
- 企業案件・タイアップ
- 楽曲提供
「全部」と決めるのか、「マネージャーが関わった案件だけ」にするのか。ここを決めないまま始めると、後から必ず問題になります。
3. やめるときの条件
始めるときに、終わり方を決めておきます。何ヶ月前に伝えるか、進行中の案件はどうするか、辞めた後のシェアは続くのか。
終わり方を決めてある関係のほうが、安心して始められます。
4. 権利の扱い
いちばん重要です。著作権と原盤権を誰が持つのか。
マネージメントを受ける代わりに権利を渡す、という契約は実際にあります。それ自体が悪いわけではありませんが、意味が分からないまま署名するのは避けてください。
迷ったら、契約前に第三者に見てもらう。「今すぐ決めてほしい」と急かす相手とは、組まないほうがいいです。
探し方より、まず準備
「どこでマネージャーを探せばいいですか」と聞かれることがあります。事務所、知人の紹介、SNS、公募。方法はいくつもあります。
ただ、探し方より先に決まっていないといけないのが「何を任せたいか」です。
ここが空のまま人に会っても、話が進みません。逆に、「週に何時間のこの作業を任せたい」「この交渉を代わってほしい」と言える状態なら、相手も判断できます。
上に書いた「書き出す・分ける・捨てる・手順にする」を先にやっておくと、探す段階がずっと楽になります。
357studioの考え方
357studioでは、マネージメントをコーチングの上位に置いています。
- 無料相談(0円・60分)— 現状を整理する
- アーティスト実践プログラム(¥68,000・8週間)— 発信・集客・値付け・宛先を自分で作れるようにする
- 継続コーチング(月額)— 作った仕組みを回しながら伴走する
- マネージメント(固定+レベニューシェア)— 実務と交渉まで引き受ける
いきなり4番からは受けていません。8週間一緒にやってみないと、組めるかどうか分からないからです。マネージメントは年単位の関係になるので、合わないまま始めると双方の時間を失います。
そして、上で書いた「付ける前にやること」は、プログラムの中でやる作業とほぼ同じです。だから順番になっています。
まとめ
- マネージャーの仕事は段取り・交渉・守り・判断への同席の4つ
- 役割分担を曖昧にすると必ず揉める。決めるのは本人
- 付ける前に、やっていることを全部書き出して、捨てて、手順にする
- 「何を頼みたいか」が言葉になっていない状態で人を入れると、混乱が増えるだけ
- 売れてからではなく、仕組みを作る段階から組むほうが早い
ひとりで抱えている状態がつらいなら、まず整理からです。整理した結果、自分で回せるなら人は要りません。それでも手が足りないと分かったときが、組むタイミングです。