ライブハウスの平日が埋まらない理由と、箱側でできる集客
ライブハウスの平日を埋めるには、バンドの集客に頼る前に、箱側で動かせる3つを変えます。ブッキングの基準を書くこと、箱そのもののファンを作ること、そしてライブ以外の使い方で平日を売ることです。
金土は埋まるのに、平日が埋まらない。多くのライブハウスが抱えている状態です。
ここで「出演するバンドが集客してくれない」と考えると、打ち手がなくなります。バンドの集客力は箱側でコントロールできない変数だからです。動かせるところから見ていきます。
私はもともとバンドのボーカルで、出演者の側にいました。平日の4組対バン、持ち時間30分、終演後に封筒でノルマを渡す。そんな日を何度も経験しました。ノルマは箱やイベントによりますが、メンバー1人あたり少なくて15,000円、多いと30,000円くらいです。この記事は、その経験も踏まえて、箱の側に向けて書いています。
平日が埋まらない構造
平日のブッキングは、埋めることが目的になりがちです。空き枠を埋めるために、動員が読めないバンドも入れる。すると、こうなります。
- 出演者は増えるが、1組あたりの動員は減る
- ノルマで赤字を回避するので、出演者の不満が溜まる
- お客さんから見ると「誰が出ているか分からない日」になる
枠を埋めた結果、箱の平日が「行く理由のない日」になっている。これが構造です。
箱側で動かせる3つ
1. ブッキングの基準を書く
「良さそうだから」で決めていると、毎回条件が変わります。基準を紙に書いてください。
- 過去の動員実績(自己申告ではなく、他の箱での実数)
- 告知をどのくらいの頻度で出しているか
- その日のほかの出演者と、客層が近いか
3つ目が抜けがちです。客層がバラバラの対バンは、お互いの客が帰るだけで、誰の得にもなりません。
私が最後にやったバンドでは、対バンを付き合いではなく、音楽ジャンルや数字で選んでいました。箱が同じ基準でブッキングしてくれれば、出演者は助かります。
2. 箱そのもののファンを作る
お客さんは「バンドを見に来ている」のであって、箱を選んでいるわけではありません。ここを変えられると、平日の底が上がります。
やることは地味です。箱のアカウントで、出演者の紹介を出す。当日の様子を出す。次に何があるかを出す。「この箱が出す情報は面白い」と思われる状態を作ると、出演者を知らない人が来はじめます。
ここは音楽教室の集客と同じで、来た人の連絡先を残せるかどうかで積み上がり方が変わります。
3. 平日の使い方そのものを変える
ライブで埋めることにこだわらないほうが、平日は動きます。
- 時間貸し:配信、撮影、発表会、社内イベント
- 企画もの:箱主催のイベント。出演者を箱が選ぶので客層を揃えられる
- 練習利用:ステージリハとして安く開放する
ライブ1本で赤字を出すより、時間貸しで確実に埋めたほうが利益は残ります。
見る数字は3つでいい
- 稼働率:月の営業日のうち、何日埋まったか
- 1公演あたりの来場者数:本数ではなく、1本の中身
- ドリンク・物販の1人あたり単価:入場料以外で、いくら落ちているか
本数だけを追うと、赤字の日を増やして忙しくなります。2番と3番が上がっているかで判断してください。
平日1本の損益を先に出す
埋まっているのに残らない平日があります。感覚で判断せず、1本ごとに次の式で確かめます。
- 売上を出す:チケットやノルマの箱の取り分+ドリンク+物販の手数料+機材やバーの追加売上
- その日だけの経費を引く:スタッフの人件費、PAと照明の外注費、その日の広告費
- 残りを、家賃など固定費の「1日分」と比べる
比べ方の例です。金額は説明用の仮の数字なので、自分の箱の数字に置き換えてください。
| 使い方 | 売上(例) | その日の経費(例) | 手元に残る額(例) |
|---|---|---|---|
| 4組のブッキング、来場20人 | 80,000円 | 50,000円 | 30,000円 |
| 時間貸し(撮影、3時間) | 45,000円 | 10,000円 | 35,000円 |
| 音楽教室の発表会(貸切) | 120,000円 | 40,000円 | 80,000円 |
ライブの本数を減らすことに抵抗があるのは自然です。ただ、この表を1か月分作ると、「守る平日」と「売り方を変える平日」が分かれます。全部の平日を同じように埋めなくて大丈夫です。
出演者に渡せるものを持つ
選ばれる箱は、出演者に「集客の材料」を渡しています。
- 告知に使える会場写真とロゴ
- アクセス案内のテンプレート
- 過去のライブ写真・映像
毎回バンド側が作っているものを箱が用意しておくだけで、告知の質が上がります。結果として動員が増えるので、箱の売上に返ってきます。
私も最後のバンドでは、ライブのたびにスタッフを入れていろいろな角度から撮影し、編集していくつものショート動画にして広げていました。出演者にとって、ライブの映像は次の集客の材料です。箱が撮影の環境や素材を用意していれば、それだけで「出たい箱」の理由になります。
近隣と組むと、平日が動きやすい
箱だけで平日を埋めようとすると、打ち手が限られます。同じ地域で音楽に関わっている相手と組むほうが早いです。
- 音楽教室:発表会の会場として。年1回でも、単価が高く確実に埋まります
- リハーサルスタジオ:ステージで音を出したい層を相互に紹介する
- 楽器店:試奏イベント、メーカーの体験会。機材メーカーが費用を出すこともあります
- 専門学校・大学の軽音:定期的な発表の場として、年間の枠で押さえてもらう
いずれも「日程が先に決まる」のが利点です。直前のブッキングで埋める運営から抜けられます。
音楽教室の集客の考え方や、リハーサルスタジオの稼働率の上げ方も知っておくと、相手に合わせた提案がしやすくなります。
予約と当日の摩擦を減らす
初めて来る人にとって、ライブハウスは分からないことが多い場所です。ここで来場をやめる人がいます。
- 予約が要るのか、当日でも入れるのか
- ドリンク代は別なのか、いくらか
- 途中入場・途中退場ができるのか
- 何時に行けば目当てのバンドが見られるのか
最後は特に大きいです。タイムテーブルを事前に出す箱と、出さない箱では、初見の来場率が変わります。「1組目から3時間いないといけないなら行かない」と判断されているからです。
チケットの予約は、ライブハウスでは出演者が受ける形が一般的です。そのため、箱のサイトを見ても予約方法が分からないことがあります。公演ページごとに「予約は各出演者のSNSから」「当日券あり」と書くだけでも、初めての人は動きやすくなります。
まず30日でやること
全部を一度に変える必要はありません。次の順番で進めます。
- 1週目:先月の平日を全部書き出し、1本ごとの来場者数と手元に残った額を入れる
- 2週目:ブッキングの基準を3行で書き、スタッフと共有する
- 3週目:音楽教室、楽器店、スタジオ、学校のうち2件に、来季の平日の使い方を提案する資料を作る
- 4週目:公演ページに、タイムテーブル、ドリンク代、途中入退場の可否を載せる
翌月は、平日の稼働率、1公演あたりの来場者数、1人あたりのドリンクと物販の単価を先月と比べます。
よくある質問
ライブハウスの平日が埋まらないのはなぜですか?
空き枠を埋めることが目的になると、動員の読めない出演者が増え、お客さんから見て誰が出ているか分からない日になるからです。枠を埋めた結果、平日が行く理由のない日になっています。ブッキングの基準を決めて、客層を揃えるところから変えます。
ノルマをなくすべきですか
なくすかどうかより、何に対する対価なのかを説明できるかです。機材、人件費、場所。内訳を出せる箱は、金額が高くても納得されます。出せないと「取られている」と受け取られます。
平日に企画を打っても人が来ません
企画の中身より、告知の期間が短いことが多いです。平日に来てもらうには予定を空けてもらう必要があるので、最低1ヶ月前から動かしてください。
SNSは何を出せばいいですか
出演者の告知をそのまま流すだけでは、フォローする理由がありません。箱の人が書いた言葉を混ぜてください。どこが良かったか、次は何をやるか。それが箱のファンを作ります。
ライブ以外に平日は何に使えますか?
配信、撮影、発表会、社内イベントなどの時間貸しと、ステージリハーサルとしての開放が使いやすいです。音楽教室や学校のように日程が先に決まる相手と組むと、直前のブッキングに頼らずに済みます。
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