個人音楽教室の月謝の決め方【相場に合わせる前に計算すること】

個人で音楽教室をやっている人が、いちばん相談しづらいのが月謝の話だと思います。周りに聞ける相手がいないので、近隣の教室を調べて、それに合わせて決める。これが一番多いパターンです。

ただ、相場に合わせただけの金額は、続けられないことがあります。

まず、実際にかかっている時間を数える

30分のレッスンにかかっている時間は、30分ではありません。

  • レッスンの準備、教材の用意
  • 前後の入れ替え、片付け
  • 連絡のやり取り(日程変更、質問)
  • 教材研究、選曲
  • 発表会の準備(年間で相当な時間)
  • 会計、月謝の管理

これを全部足すと、30分のレッスンに実際は45分〜1時間かかっていることが多いです。

月謝8,000円で月4回、1回30分。時給に直すと4,000円に見えますが、実働で割ると2,000〜2,700円になります。ここを知らずに値付けすると、忙しくなるほど苦しくなります。

教室にかかっている固定費

自宅教室でも、ゼロではありません。

  • 楽器の調律・メンテナンス(ピアノなら年1〜2回)
  • 楽器の買い替え積立
  • 光熱費(レッスン中の冷暖房)
  • 教材費、楽譜代
  • 発表会の会場費(回収できていますか)
  • 保険

発表会が毎年赤字になっている教室は、かなり多いです。参加費で足りていないぶんは、実質的に月謝から出ています。ここも計算に入れてください。

相場は「合わせるため」ではなく「知るため」に調べる

近隣の月謝を調べる目的は、同じ金額にすることではありません。自分がどの位置にいるかを知り、差を説明できるようにするためです。

相場より高い場合、理由が言えれば選ばれます。

  • 1回のレッスンが長い
  • 振替に柔軟に対応する
  • レッスン外の質問にも答える
  • 発表会の回数が多い
  • 講師の経歴・専門性

安さで選ばれた生徒は、もっと安い教室ができたら移ります。価格以外の理由で選ばれる状態を作るほうが、長い目で見て楽です。

金額は必ず明示する

「お問い合わせください」にしている教室は、それだけで候補から外れます。相手は複数の教室を並べて比べていて、金額が分からない選択肢は最初に落とすからです。

書くのは月謝だけでは足りません。

  • 月謝(回数と1回の時間もセットで)
  • 入会金
  • 教材費
  • 発表会費(参加は任意かどうかも)
  • 年会費・施設費があるなら、それも

後から追加費用が出てくるのが、いちばん信用を落とします。最初に全部出しておくほうが、結果的に申し込まれます。

値上げをするとき

何年も据え置いている教室が多いのですが、材料費も光熱費も上がっています。値上げは必要な調整です。

伝え方に決まった型があります。

  • 2〜3ヶ月前に伝える:直前は不誠実に見えます
  • 何が良くなるかを添える:レッスン時間、教材、発表会の内容
  • 既存の生徒は据え置き、新規から上げるという方法もあります

「原材料が上がったので」だけだと、相手にとっては自分に関係ない理由です。「何が変わるか」を1つでも添えてください。

回数券・チケット制という選択

月謝制だけでなく、回数券を用意する教室が増えています。

  • 向いている人:仕事が不規則、大人の生徒、続けられるか不安な人
  • 教室側の利点:入口のハードルが下がる。先に入金される
  • 注意点:収入が読みにくくなる。有効期限を決めておく

月謝制を主にして、回数券を「まず試したい人」の入口にするのが扱いやすい形です。

まとめ

  1. 実働時間で計算する(レッスン時間ではない)
  2. 固定費と発表会の赤字を入れる
  3. 相場は位置を知るために調べる。合わせるためではない
  4. 金額は全部明示する(月謝・入会金・教材費・発表会費)
  5. 値上げは2〜3ヶ月前に、何が良くなるかを添えて

値段は自分の価値の証明ではありません。数字と役割で決められます。

安すぎる月謝が起こすこと

不安から相場より安く設定する人が多いのですが、副作用があります。

  • 生徒が増えるほど苦しくなる:時間は増えるのに、利益が追いつかない
  • 値上げしにくくなる:一度決めた金額は動かしづらい
  • 安さで来た生徒は、安さで去る
  • 自分が消耗する:続かなければ、生徒にとっても損です

特に4つ目が深刻です。教室が続くことが、生徒にとって最大の価値だからです。無理な価格は、生徒のためにもなりません。

単価を上げずに、収入を増やす方法

月謝を上げるのが難しいときの選択肢もあります。

  • レッスン時間を伸ばして、それに応じた金額にする:30分→45分。時間あたりの単価は変わらなくても、1人あたりの収入は増えます
  • グループレッスンを併設する:同じ1時間で複数人
  • 単発の講座を作る:楽譜の読み方、コード入門など
  • オンラインを併用する:移動時間が消えるぶん、枠を増やせます

時間を売る商売なので、時間の使い方を変えるのが本質的な打ち手です。

月謝以外のお金の話

決めておかないと後で揉めるのが、この4つです。

  • 欠席時の扱い:振替あり・なし。何日前までの連絡か
  • 長期休みの月謝:8月や年末年始をどうするか
  • 退会の申し出:何ヶ月前までに伝えてもらうか
  • 教材費の請求タイミング

入会時に紙で渡してください。口約束にしておくと、必ずどこかで食い違います。

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