撮影の前に一枚の紙を渡されて、内容をよく読まないままサインする。これが後から効いてきます。
同意書はあなたの写真を相手がどう使っていいかを決める書類です。難しく見えますが、見るところは限られています。
そもそも同意書とは何か
正式には「肖像権使用許諾書」「モデルリリース」などと呼ばれます。写真に写っている人には肖像権があり、勝手に公開されない権利があります。同意書は、その権利について「この範囲なら使っていいですよ」と許可を出す書類です。
つまり、あなたが権利を持っていて、それを一部貸している。この構図を理解しておくと、読むべき場所が見えてきます。
1. 使用範囲(どこに載るか)
最初に見る項目です。
- カメラマン個人のSNS・ポートフォリオのみか
- Webメディアへの掲載も含むか
- 写真展やコンテストへの応募も含むか
- 商用利用(広告・商品パッケージ)を含むか
- 写真素材サイトでの販売を含むか
いちばん注意したいのが最後の2つです。「商用利用可」「素材として第三者に提供する場合がある」と書かれていると、自分の写真が知らない広告に使われる可能性があります。作品撮りのつもりだった、では取り返せません。
2. 使用期間
「期間の定めなく」「無期限」と書かれていることが多い項目です。
写真の性質上ある程度は仕方ない部分もありますが、無期限なら取り下げができるかどうかが重要になります。次の項目とセットで見てください。
3. 取り下げができるか
これがいちばん大事です。
数年後に就職や進学があったとき、あるいは活動をやめたとき、掲載を止めてほしくなることがあります。そのときに「申し出があれば速やかに削除する」と書いてあるかを確認してください。
書いていない場合、口頭でいいので確認して、その返答をメッセージで残しておいてください。「削除依頼には応じます」の一文が文字で残っているだけで、後の交渉がまったく変わります。
4. 加工・改変の範囲
色調整までなのか、体型や顔の加工まで許可することになるのか。
「必要に応じて加工することがある」とだけ書かれている場合、どこまでを想定しているか聞いておくと安全です。意図しない加工をされて公開されるのを防げます。
5. 名前とアカウントの扱い
写真と一緒に、あなたの活動名やSNSアカウントが載るかどうか。
載せてほしい場合も、載せてほしくない場合も、先に伝えておけば揉めません。本名を載せられたくない場合は、必ずここで確認してください。
6. 報酬と費用
無償なのか、報酬があるのか。あるいはこちらに費用が発生するのか。同意書の中に費用の項目がまぎれていないかを見てください。
同意書がない撮影はどうなのか
同意書がないこと自体は珍しくありません。個人同士の撮影では、書面を交わさないほうが多いくらいです。
ただしその場合、あとから「聞いていない」が起きやすくなります。書面がないなら、メッセージで次の3つだけ確認して残しておいてください。
- 「どこに掲載されますか」
- 「自分のSNSにも載せていいですか」
- 「あとで取り下げをお願いすることはできますか」
この3つの答えが文字で残っていれば、実質的に同意書と同じ役割をします。
サインする前に
その場で全部読む時間がなければ、写真に撮らせてもらってください。「控えとして撮っておきたいです」と言えば、まっとうな相手なら断りません。
控えを渡してもらえない、写真も撮らせてもらえない同意書には、サインしないほうが安全です。
条文の読み替え早見表
同意書は独特の言い回しが多いので、日常語に置き換えておきます。
- 「本人の肖像等を無償で使用することを許諾する」=お金は発生しません
- 「媒体・地域・期間を問わず」=どこでも、いつまでも使えます。かなり広い
- 「第三者への再許諾を含む」=相手が他の会社に渡すことがあります
- 「二次利用」=別の目的に使い回すこと。広告転用などが該当します
- 「改変を許諾する」=トリミングや色補正だけでなく、加工全般を含み得ます
- 「本許諾は撤回できないものとする」=取り下げに応じない、という宣言
最後の一文があったら、その場でサインしないでください。撤回できない許諾は、数年後の自分を縛ります。
電子サイン・チェックボックスの場合
紙ではなく、応募フォームのチェックボックスで同意を取る形も増えています。「利用規約に同意する」の一行にまとめられていることが多いです。
この場合も、リンク先の規約に写真の使用範囲が書かれています。チェックを入れる前にリンクを開いてください。あとから見返せるよう、規約のページも画面保存しておくと安心です。
すでに写真が使われていた場合
同意していない場所に自分の写真が出ていた場合、まず相手に削除を依頼します。事実だけを簡潔に書いてください。
「◯月◯日に撮影した写真が◯◯に掲載されていますが、この掲載について同意した記憶がありません。削除をお願いします。」
応じてもらえない、連絡が取れない場合は、掲載されているプラットフォーム側に削除を申請する方法があります。多くのSNSには、本人の写真が無断で使われている場合の報告窓口があります。それでも解決しないときは、消費者ホットライン「188」や、法テラス(0570-078374)で相談先を案内してもらえます。
よくある勘違い
「一度サインしたら永久に取り消せない」と思っている方がいますが、そうとは限りません。取り下げの申し出に応じる旨が書かれていれば当然できますし、書かれていなくても相談すれば応じてもらえることは多いです。まず言ってみてください。
「同意書があるから安心」も違います。同意書は相手を守る書類でもあります。内容を読まずにサインすると、むしろ広い範囲の使用を許可したことになります。あるかないかではなく、何が書いてあるかです。
その場で聞ける確認フレーズ
紙を渡されたとき、この3つを口に出すだけで十分です。
- 「掲載先はどこまでになりますか」
- 「商用や素材としての利用は含まれますか」
- 「あとで削除をお願いすることはできますか」
3つとも即答できる相手なら、書類の管理がきちんとしています。逆に言葉を濁す相手は、そもそも運用があいまいだということです。
Pasha!の場合
掲載範囲はPasha!のサイトと公式SNSのみで、事前の同意なく他では使いません。素材としての第三者提供や商用利用はしません。掲載ページは公開前に必ずご本人に確認いただき、その時点で取りやめても構いません。公開後も、連絡いただければ取り下げます。理由を聞くこともありません。
よくある質問
撮影の同意書で最初に確認すべき項目は何ですか?
使用範囲です。カメラマン個人のSNSだけか、商用利用や素材としての第三者提供まで含むかで意味がまったく変わります。特に「商用利用可」「第三者に提供する場合がある」という記載には注意してください。
同意書に「期間の定めなく」と書かれていても大丈夫ですか?
取り下げができるかどうかとセットで確認してください。「申し出があれば速やかに削除する」という記載があるか、なければ口頭で確認してメッセージに残しておくことをおすすめします。
同意書がない撮影は危険ですか?
同意書がないこと自体は珍しくありません。ただし後から「聞いていない」が起きやすくなるため、掲載先・自分のSNSでの使用可否・取り下げの可否の3点だけはメッセージで確認して残しておいてください。
同意書の控えはもらえますか?
もらってください。渡してもらえない場合は、その場で写真に撮らせてもらう方法もあります。控えも撮影も断られる同意書にはサインしないほうが安全です。