回転寿司とQBハウスに学ぶ。「業界の当たり前」を分解して勝つ方法

業界の当たり前を分解して勝つには、自分の商売を機能ごとにばらし、遠い業界のやり方を1つ借りて、小さく試します。新しい発明は要りません。必要なのは、すでにあるものの新しい組み合わせです。

回転寿司を発明したのは、大阪の寿司屋の主人でした。ヒントは寿司業界の中ではなく、見学先のビール工場のベルトコンベアにあったといいます。寿司もコンベアも昔からありました。新しかったのは「つなぎ方」だけです。

イノベーションの正体は「組み合わせ」

創業時に10分1,000円で始めたQBハウスも同じ構造です。創業者は理美容業界の未経験者でした。だから「カットだけでいいのでは?」と業界の当たり前を疑えたのです。髪を吸い取る装置はガソリンスタンドの給油ホース、券売機は立ち食い蕎麦屋から発想を借りたと語られています。ゼロから発明したものではありません。

スーツケースに車輪がついたのは1970年ごろです。車輪は5000年前からあったのに、です。材料はずっと目の前に転がっていて、誰かが重ねるのを待っていました。

小さいお店にとって、これは大事な話です。研究開発のお金も、大きな広告費もなくても、組み合わせなら試せます。特に小さな市場で一番を目指すニッチ戦略と相性が良い考え方です。

自分の業界に応用する3ステップ

  1. 分解する。自分の商売を「機能」に分けます。カフェなら、コーヒー、席、長居の許可、人との接点です。ばらすと差し替えられる部品が見えてきます。
  2. 遠くから借りる。同業ではなく、まったく別の業界が同じ問題をどう解いているかを見ます。近くの真似は同質化、遠くからの借用は差別化になります。
  3. 雑に試す。最初の一個は不格好で構いません。貼り紙一枚、手作業のテスト運用で十分です。紙の上の完璧な案より、現実に出した雑な一個のほうが多くを教えてくれます。

分解するときに使う5つの質問

「分解してください」と言われても、慣れていないと手が止まります。次の質問に、紙に書いて答えてみてください。

  1. お客さんは、うちで本当は何を買っているか(髪を切るのか、身なりを短時間で整えるのか)
  2. お客さんが一番イライラしている時間はどこか
  3. 業界では当然なのに、お客さんが頼んでいないサービスは何か
  4. なくしたら本当に困る人は誰か
  5. 同じ悩みを、まったく別の業界はどう解いているか

借りる先の例

次の表は、考え方を示すための例です。実際に効くかどうかは、お店で試してみないと分かりません。

業種困っていること借りる先試す形
美容室次の来店が空いてしまう歯科の定期検診の案内帰り際に次回の目安を伝え、時期が来たら連絡する
個人の教室途中でやめる人が多いジムの記録カード毎回1行の進み具合を残して一緒に見る
パン屋売れ残りが読めない雑誌の定期購読週1回の取り置きを少人数で募る
整体院初回が不安で来てもらえない試着室15分の相談だけの枠を作る

ポイントは、自分と同じ業界を見ないことです。同業の成功事例は、見つけやすい反面、真似しても違いが生まれません。普段お客さんとして「これは楽だ」と感じたサービスは、良い材料になります。

雑に試すときのルール

「雑に」は、適当にやるという意味ではありません。失敗しても困らない大きさに切るという意味です。次の3つを先に決めます。

  • 期間:まず2週間など、終わりの日を決める
  • 費用:失敗しても痛くない金額に収める
  • 見る数字:予約数、問い合わせ数など1つだけに絞る

結果を見て、続ける、変える、やめるのどれかを決めます。うまくいかなくても、お客さんが何に反応しなかったかが分かります。逆に反応があれば、そこで初めて仕組みや設備にお金を使えば十分です。

「それ、変じゃない?」は当たりの音

新しい組み合わせは、うまくいく前はたいてい間が抜けて見えます。周りに「変じゃない?」と言われたら、むしろ誰もやっていない領域に踏み込めたサインです。無難で安心なアイデアは、たいていもう誰かに取られています。

ただ、変であれば良いわけではありません。お客さんの困りごとを解いていない変わったアイデアは、話題になっても売上につながりません。「誰の、どの困りごとが軽くなるのか」を一文で言えるかを確かめてください。

業界歴が長い人ほど「うちの業界はこういうものだ」が体に染みついています。そこを一度ばらして、遠くから部品を借りてきましょう。次の打ち手は、業界の外に転がっています。

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よくある質問

小さいお店でもイノベーションは起こせますか?

起こせます。ここでいうイノベーションは大発明ではなく、今ある商売の部品を組み替えることです。貼り紙やメニューの変更など、お金をかけない形から試せます。

良い組み合わせはどうやって見つければいいですか?

別の業界で、自分がお客さんとして便利だと感じたことを書き出します。そのうえで、自分のお店で同じ困りごとがないかを照らし合わせると見つけやすくなります。

同業の成功事例を真似するのはだめですか?

基本を学ぶために真似するのは問題ありません。ただ、同じことをすると比べられて値段の勝負になりやすいです。差をつけたいなら、別の業界から借りるほうが向いています。

試してみて反応がなければどうすればいいですか?

やめて構いません。最初に決めた数字が動かなければ、次の案に移ります。何に反応がなかったかを1行残しておくと、次の案を考えるときに役立ちます。

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