【シンガー・ソロアーティスト向け】個の魅力で選ばれるデジタルマーケティング戦略

シンガーやソロアーティストのマーケティングは、歌の魅力を「何者か」が分かる形で見せ、カバーで見つけてもらい、ファンが応援できる受け皿へつなぐ順番で進めます。歌唱力より先に、届け方の順番を決めると、限られた時間でも無駄が減ります。

「歌はうまいと言われるがファンが増えない」「SNSで発信しているが聴いてもらえない」。多くのシンガーやソロアーティストが抱える悩みです。

私はもともとバンドのボーカルで、曲には自信がありました。バンド時代のアカウントにはフォロワーが3,000人いましたが、告知しても動員は5人でした。そこで知ったのは、届け方を知らないと届かないということです。この記事では、ひとりで活動する人が今日から決められることに絞ってまとめます。

シンガーのパーソナルブランディング戦略

1. 「何者か」を明確にする

「このジャンルならこの人」と思い出してもらえると、知らない人にも説明してもらいやすくなります。J-POP、R&B、ジャズ、ボーカロイドのカバーなど、まず主にやることを決めます。そのうえで、プロフィール文、サムネイル、投稿の見た目をそろえます。

プロフィールは次の型で書くと、短くても伝わります。

  • 誰に:「夜ひとりで聴きたい人に」
  • 何を:「ピアノ一本のバラードを」
  • どう届ける:「毎週金曜に1曲」
  • 次の一歩:「ライブの予定はこちら」

2. カバー動画で「発見される」

オリジナル曲だけでなく、流行の曲や、長く検索される名曲のカバーを定期的に投稿します。「○○ カバー」という検索や、おすすめ表示の入口を作ることで、知名度がなくても聴かれる機会が生まれます。

カバーを出すときは、権利を確認してください。動画サービスによっては音楽の管理団体と包括契約を結んでいますが、市販のカラオケ音源や原曲の音源を使う場合は、別の許可が必要になることがあります。自分で演奏した伴奏が安全です。投稿先の規約を確認してから公開しましょう。

3. ライブ配信で距離を縮める

InstagramライブやYouTubeライブは、曜日と時間を決めて続けると、ファンの習慣になります。投げ銭やスーパーチャットの機能があるサービスなら、収益の入口にもなります。

ただし、配信は時間を多く使います。配信で歌うのか、曲を作るのか、ライブに出るのかは、次の節の時間配分と合わせて決めてください。全部を同時にやろうとすると、どれも続きません。

4. ファンが「応援したくなる」ストーリーの発信

楽曲の背景、歌詞に込めた想い、制作過程、悔しかったことや嬉しかったことを発信します。完成品だけでなく途中も見せると、聴く人はその歩みに関われます。

「私、何したらいいの?」。最後にやったバンドで、何度も来てくれていた方に「何かこっちからできることある?」と聞いたときに、返ってきた言葉です。私はライブに来てくれるだけで十分だと思っていましたが、その方はもっと応援したいと思っていました。そこからCDを出し、ファンクラブを作って、応援の仕方を分かりやすく示しました。

応援は、受け皿がないと行き場がありません。ファンの気持ちを待つだけでなく、「こうしてもらえると嬉しい」を具体的に示してください。

カバーとオリジナルの比率を決める

ひとりで活動していると、「知られること」と「自分の曲を届けること」が両立しません。カバーは見つけてもらいやすい代わりに、自分の曲は聴かれない。オリジナルだけだと、そもそも届かない。

現実的な進め方は、期間で比率を変えることです。

  • 最初の数ヶ月:カバー中心。まず見つけてもらう入口を作ります
  • 反応が出てきたら:カバーとオリジナルを交互に。カバーで来た人を自分の曲へ渡します
  • 指名で聴かれ始めたら:オリジナル中心へ移します

最初からオリジナルだけで押すのは、いちばん時間がかかるやり方です。順番の問題であって、オリジナルを諦める話ではありません。

ひとりでやる場合の時間配分

ソロの最大の制約は、制作も発信も自分ひとりでやることです。時間を決めておかないと、制作だけで週が終わります。

目安として、活動に使える時間を3つに割ります。

  • 制作:半分
  • 発信:3割(撮影・編集・投稿・返信まで含めて)
  • 設計と数字の確認:2割

3つ目を削る人が多いです。ただ、ここを削ると「何が効いたか分からないまま続ける」状態になり、翌月も同じことを繰り返します。月1回、30分でいいので数字を見る時間を残してください。

ソロの1週間の動かし方

ここまでの配分を、週に10時間使える人の例に直すと、次のようになります。時間は例なので、自分の生活に合わせて変えてください。

曜日の目安やること時間
週前半歌の練習、曲作り、録音5時間
週半ばカバー1本の撮影と編集、ショート動画に切る2時間
週後半投稿、コメントへの返信、ライブの告知1時間
週末先週の再生数と反応を見て、次の1本を決める2時間

1本の録音を、フル動画とショート動画と告知の投稿に分けると、作る手間を増やさず見てもらう機会を増やせます。

値段を先に決める

ソロで多いのが、「無料でいいですよ」を続けて自分を安くしてしまうことです。イベント出演、楽曲提供、コラボ。声をかけられた時点で条件が決まっていないと、その場で断りにくくなります。

先に決めておくのは、この4つです。

  • 出演の最低ライン(交通費だけなのか、ギャラが出るのか)
  • 楽曲提供の下限額
  • 無料で受ける場合の条件(何が得られるなら受けるのか)
  • 断る基準

紙に書いておくだけで、その場の判断が変わります。値付けの考え方は歌手がSNSで集客する方法(357studio)とあわせて読んでください。

「何者か」は、他人の言葉で確かめる

自分では決めたつもりでも、伝わっているかは別です。確かめ方は単純で、聴いてくれている人に「自分をどう説明する?」と聞くことです。

返ってきた言葉が自分の狙いとずれているなら、発信の中身ではなく並べ方がずれています。プロフィール、固定投稿、サムネイル。最初に目に入る3か所を直すのが先です。

「聴いてくれた人」を連絡先につなぐ

SNSのフォロワーは、サービスの都合で届かなくなることがあります。私も、バンドが終わるときに「また音楽やるよ」と伝えられる連絡先は1件も残っていませんでした。

だから、SNSの外にも直接つながる場所を1つ作ります。LINE公式アカウントやメールなど、ひとつで構いません。

  1. ライブの最後に、登録するとセットリストや音源がもらえると案内する
  2. 動画の説明欄と固定投稿にも同じ案内を置く
  3. 登録者には、次のライブの先行案内や新曲の情報を送る

フォロワー数より、次のライブを直接知らせられる人が何人いるかを数えてください。ライブの本数を増やす前に、1本あたりいくら残るかも確認しましょう。出演の条件で迷うなら、ノルマの損得を出す計算機で自分の数字を入れると、判断しやすくなります。

活動の数字は3つだけ見る

全部を追う必要はありません。月に1回、次の3つを記録します。

見る数字増えたときの意味増えないときに直す場所
新しく聴いてくれた人(再生数、フォロワーの増え方)入口が機能しているカバーの選曲、サムネイル、タイトル
直接つながった人(LINEなどの登録者数)また届けられる人が増えた登録する理由と案内の場所
応援してくれた人(チケット、物販、月額の支援)活動が続く形になってきた応援の受け皿、値段、案内の仕方

よくある質問

カバーとオリジナルはどちらを先にやるべきですか?

知名度がないうちはカバーを入口にするほうが早いです。検索やおすすめで見つけてもらいやすいからです。反応が出てきたらカバーとオリジナルを交互にして、カバーで来た人を自分の曲へ案内します。

カバー動画は著作権的に投稿しても大丈夫ですか?

サービスや音源によって違います。動画サービスの包括契約の範囲でも、市販のカラオケ音源や原曲の音源の利用には別の許可が必要になることがあります。投稿先の規約と管理団体の案内を確認し、自分で演奏した伴奏を使うと安全です。

ソロで活動するとき、SNSは何本もやるべきですか?

最初は1〜2本に絞ります。主に動画で見つけてもらう場所を1つ、ファンと話す場所を1つ決めると続けやすくなります。1本の録音をショート動画や告知に分けて使えば、作る量を増やさずに済みます。

ファンに応援をお願いするのは図々しくありませんか?

そう感じる人は多いです。ただ、応援の仕方を示さないと、応援したい人は何をすればいいか分かりません。チケット、物販、月額の支援など、具体的な選択肢を示すことは、お願いではなく案内だと考えてください。

シンガーマーケティングの核心

歌の力が土台であることは言うまでもありません。しかし同じ歌唱力でも「届け方」の差が認知の差を生みます。継続的な発信・ファンとの対話・プラットフォームの特性を理解した戦略的なコンテンツ投稿を組み合わせることで、独立したアーティストとしての道が開けます。

歌の力は土台です。その土台を、誰に、どの順番で届けるかを決めることが、次の仕事です。まず今週、プロフィールを書き直して、カバーを1本出すところから始めてください。

音楽・表現活動をしている方へ

ライブのノルマが毎回いくらの持ち出しになっているかは、チケット代と枚数を入れるだけで分かります。無料・登録不要です。

ノルマの計算機を使ってみる

発信・集客・値付け・宛先を、8週間で作り直す

「告知しても届かない」「動員が読めない」「気づけば全部タダでやっている」。この4つは才能ではなく設計の問題です。少人数のグループで、自分の活動用に作り直す実践プログラムをやっています。

WGSアーティスト実践プログラムを見る

音楽活動の話は、357studioで詳しく書いています

アーティスト向けのマーケティングは、専門サイトの357studioにまとめています。この記事に近いのはこちらです。

▶ 歌手がSNSで集客する方法|ファン獲得戦略

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